高齢者がピアノを始める動機
「60歳からピアノをはじめなさい」という書籍を筆頭にYoutube、ホームページ、ブログなどで60歳からのピアノを勧めているのを見かける。
それらは60歳からピアノを始めた人の体験談に基づくものではなく、ピアノ講師の指導体験やデータに基づいてメリットなどを挙げて勧めているようです。
ところで、「世界一孤独な日本のオジサン」という本があるように、孤立して生きる高齢者や孤独死が社会問題となっています。
そんな社会的な背景もあり、「ボケ防止になりますよ」「ピアノ仲間ができますよ」などのキーワードに引かれてピアノを始める人もいるかもしれません。
ところでこのような「60歳からピアノをはじめなさい」などの読み物は誰をターゲットの書いてるのでしょう?
もちろんピアノを始めるかもしれあない高齢者なんでしょうね。
でもちょっとそれは疑問ですね。
このような物を読んでピアノを始める人がいるのかな。
60歳から始めた私はというと、そんな甘い囁きとは関係なくちょうど定年退職後にしたかったこととして始めました。
それまでにも始めたかったのですが、如何せん、私は昭和のサラリーマンでとてもピアノのための時間はありませんでした。
いや時間はあったのかもしれませんが、予定などいともたやすく反故にされる、仕事ファースト人間として生きてきました。
だからそんな私を取り巻く人間関係は全て職場関係でした。
そんな私がピアノを始めようとしたのは、退職して時間が取れるようになったこと。
親の介護による疲労など色んなことがピアノに向かわせていたのかもしれません。
中でも一番大きかったことは、やはり弾きたいぜひ弾きたい曲があったからでしょう。
そう、さだまさし&山口百恵さんの「秋桜」のピアノ曲がとても綺麗で自分で弾いてみたかったのです。
私は歌や楽器などの音楽的センスは持ち合わせていない、だけど音楽はほどほどに好きという平均的な高齢者だと思います。
もちろんピアノを始めるにあたって「60歳からピアノをはじめなさい」のような書籍を読んでいません。
おそらく私に限らずピアノを始める前にこのような本を読んで始める人は少ないのではないかなと思うのです。
そもそも何でもそうですが「目的」というのは後付けなんですよね。
「老後の生き甲斐のためピアノを弾こう、ボケ防止のためピアノを弾こう」などと目的先行で始める人はまずいないんじゃないかな。
じゃああのような本はいつ誰が読むの?となりますが、私もピアノを始めてから色々読みました。
決してピアノを選んだことを正当化するためではなく、単にどう書かれてるのかとの興味だけで読みました。
ピアノを始めた高齢者の中で「人から勧められて始めた人」は少ないと思うのです。
きっと、弾きたい、好きという気持ちが先行でしょう。
特に楽器の場合、人がしてるからするという高齢者は多いのかな?
人生の下り坂を歩く高齢者にとって若い頃からの憧れ、したかったことなど人生のやり残しをしたいと思うのではないかな。
そんな思いから始めた私のピアノですが、やり残しどころか中途半端なままピアノ人生を終えるかもしれません。
でも鍵盤に向かうことが生き甲斐に思えるならこれほど素晴らしいことはないでしょう。